健康コラム

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睡眠と健康の維持~「ちょっと眠れないくらい…」などとおっしゃらずに…~

「寝る子は育つ」という昔からの言い伝えは皆さん御存知でしょう。これは事実で、その根拠となるのが下の図です。

ねむけレベルライン(薄紫)が最高レベルに上がりきったあと、成長ホルモンの分泌が始まります。この時に、ねむけに逆らって眠らずにいると、通常量の成長ホルモンが分泌されないことがあります。寝不足や熟睡出来ない人、熟睡は出来ているが夕食時間が遅くて食後すぐに就寝している人(食事から4時間以内)の成長ホルモン分泌機能が妨げられる場合があるという報告が多々あります。

成長ホルモンはその言葉からもわかるように、“身長を伸ばすホルモン”としてよく知られています。DNAを合成したり、軟骨の合成を行って、子供の場合は主に発育にたずさわります。しかし、それ以外にも重要な働きをします。年齢層を問わず、新陳代謝(体にある物質をエネルギーとして使えるような物質に変えていく働き)を行うのに、なくてはならないホルモンでもあります。また、大人の場合は、傷を負った細胞の修復(細胞を形作る材料を細胞のもとに送り届けて組み込む)に欠かせないホルモンです。体がだるい、疲れている、疲れがなかなか取れないなどの人は、寝不足で眠たいだけだとは限りません。実は、寝不足の結果、成長ホルモン不足になって出てきた症状であることも多いのです。

成長ホルモンが出なくなると、代謝にかかわるさまざまな症状がみられます。

内科の立場から見てみましょう

成長ホルモンは、脂肪を分解(物質をエネルギーに変える)しますし、コレステロールを細胞の中に取り込ませて(細胞の細胞膜・・・家で言うところの外壁・・・の重要な材料の一つがコレステロールです。細胞を形作る材料を細胞のもとに送り届けて組み込む作業の一つと考えて下さい)、結果的に血中のコレステロールを低下させる働きがあります。成長ホルモンが出なくなると、コレステロール、中性脂肪の増加がみられ、動脈硬化が進む原因となります。脂肪が血中に増えると、体脂肪(とくに内臓脂肪)の増加が目立ってきます。内臓脂肪からは、今回は詳しくは述べませんが、悪玉ホルモン(代謝を妨げるホルモン)が出て、インスリン(血中の糖分の量を下げるホルモン)の働きが悪くなります。それが限界を超えると糖尿病です。まさにメタボリック・シンドロームまっしぐらです。

成長ホルモンは、大人になっても骨格や筋肉を維持するのに重要な役割を担っています。その成長ホルモンが欠乏すると、骨が弱くなり、筋肉量が減少していきます。それは運動能力低下につながり、運動不足は更なる体重増加を招いて・・・・・もうメタボリック・シンドローム収拾不能状態です。

皮膚科の立場から見てみましょう

成長ホルモンが出なくなると、皮膚は薄くなり、乾燥します。

皮膚の細胞が増えにくくなるから、皮膚が薄くなるのは解るとして、なぜ乾燥するのでしょうか?これは、皮膚の皮脂腺・汗腺に成長ホルモンの受け皿があるためです。肌の潤いは、肌の深い層に水分を保つのも大切ですが、表面を良質の皮脂で薄くまんべんなくおおわれている事も大切なのです。成長ホルモンが不足して皮脂腺の働きが落ちて、皮脂が不足すれば皮膚に潤いとツヤがなくなります。成長ホルモン不足で汗腺の働きが落ちると発汗量が減少します。発汗量が減少すると、体の表面から熱が発散されにくくなり、皮膚の温度が上がってしまうので、痒みのレベルも上昇してしまいます。我慢できずに掻いてしまうと、肌の表面が傷つき、傷から肌の深い層の水分も逃げて行き、乾燥はいっそう進みます。

発汗量の減少は体温の上昇にもつながるので、変な火照りを感じる現象もおこります。暑がりになって体を動かすのがおっくうになると・・・・ああ、これは運動不足で、再びメタボリック・シンドロームの登場となります。

今までに書いてきたいくつもの症状に思い当たる方、是非、ご自身の生活リズムとパターンを今一度見直してみてはいかがでしょうか。仕事上、昼夜逆転がやむを得ない方にも、可能な範囲で健康を保つアドバイスもさせて頂きます。
「ちょっと眠れないくらい・・・」などとおっしゃらず、一度相談にいらして下さい。

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